2025
テイラー兄弟の贈り物
『リアホナ』2025年12月号


テイラー兄弟の贈り物

同じワードに、テイラー兄弟という 70代の兄弟がいました。テイラー兄弟は盲目で、いつも白い杖をついて近所を散歩していました。我が家は隣の通りに住んでいましたから、度々顔を合わせてはあいさつを交わす仲でした。

突然の別れ

2013年、長女が伝道に出るときのことです。長女が直接、「伝道資金として使ってね」と、テイラー兄弟から小切手を頂きました。250ドルというあまりの額に驚きましたが、数年後、次女と三女が伝道に出る際にも同額を下さいました。当初は我が家の状況を鑑みて、近所のよしみで支援してくれたのかと思いましたが、テイラー兄弟はワードから伝道に出る兄弟姉妹全員に250ドル渡していたことを後に知りました。

時は過ぎて2022年の12月、次男のMTC入所まで残り1か月を切ったある金曜日のことです。我が家の前を散歩していたテイラー兄弟に声をかけると、「息子さんは神殿に行っているの?」と尋ねられました。「行っていますよ」と答えたところ、「火曜日にわたしが連れて行きたいから、また連絡するね」と言ってくれました。

月曜日になり、「そう言えば明日は何時に行くんだろうね?」息子とそんな会話を交わした矢先のことです。─雪かきをしていたテイラー兄弟が、心不全のため自宅前で亡くなっているところを発見された─近所の人がそう教えてくれました。享年77。何か病気を患っていたわけでもないそうです。寒い日も元気に散歩する姿を見かけていたわたしは、驚くとともにショックを受けました。

お葬式では、テイラー兄弟がいつも定期的に神殿参入していたことをご家族がお話しされていました。棺の中に横たえられたテイラー兄弟の手には、神殿の推薦状が握られていました。

その数週間後、テイラー兄弟の娘さんが家にやって来ました。彼女は「父が息子さんへの小切手を残していたので」と言い、次男に250ドル分の小切手を渡してくれました。一緒に神殿参入する際に渡そうと思っていたのか、宛名には息子の名前、署名欄にはテイラー兄弟直筆のサインが残されていました。亡くなる直前まで息子のことを気にかけてくれ、最後まで人々に奉仕していたテイラー兄弟。その生き様を尊敬する気持ちでいっぱいになりました。

テイラー兄弟の遺志

あの日から2年近くが過ぎた2024年10月、長男(当時25歳)のカイがヤング奉仕宣教師として召されることが決まりました。カイはダウン症があり、ほとんど会話はできませんが、 MTCのカフェテリアでお皿洗いを手伝うことになりました。奉仕中はTシャツにスウェットパンツ、エプロン姿で働いていますが、週に一度のゾーンミーティングと6週間に一回の伝道部大会には、ネクタイを締めて出席します。

召しを受けて少ししてから、テイラー兄弟の娘さんが我が家を訪れました。「父は亡くなる前から、家族とワードの若者が伝道に出るときの資金を助けるための銀行口座を持っていました。これはカイのためです。」そう言って、250ドルの小切手を持ってきてくれたのです。カイは奉仕宣教師ですから、教会に対して毎月伝道資金を支払う必要がありません。そのため初めはお断りしましたが、「父はとにかく奉仕する宣教師、若者たちには絶対あげたいと言っていたのでもらってほしい」と言われ、受け取ることにしました。このお金を何に使おうかと考えた末、いつも同じスーツを着ているカイのために新しいスーツを買うことにしました。

霊界から見守られて

テイラー兄弟の小切手を銀行で現金に換えて、近所にあるミッショナリーモールにカイを連れて行きました。スーツを試着し、鏡の前で裾直しをしてもらうカイは、とても嬉しそうでした。ところがチラッと値段を見ると、399ドル。頂いた250ドルで足りない分はわたしが負担しようと思いました。好きなスーツを選んだ後、半袖のワイシャツも買うことにしました。ダウン症の人は首周りが太く、腕が短いという特徴があり、普段はなかなか合うサイズがないのですが、そのお店でカイにピッタリのシャツを見つけたのです。全部で450ドルくらいだろうと思ってレジに行きました。

ところがレジのお兄さんは、「税金も入れて249ドル23セントです」と言うではありませんか。元の値札には何の値引き表示もありません。びっくり仰天するわたしに彼は、「あ、割り引きしているんですよ」と言って77セントのお釣りをくれました。わたしは興奮のあまり、初対面にもかかわらず彼にテイラー兄弟の話をしました。ちょうど今、250ドルだけ持っていることを伝えると、「すごい、奇跡ですね!!」と言って喜んでくれました。

生前、質素な生活をしながら神殿で奉仕し、私財の中から宣教師のために貯金を続けたテイラー兄弟!天に宝を蓄え、亡くなった後も人々に奉仕し続ける模範を示してくださいました。わたしの驚いた顔を見て(今は盲目でないはずなので)、ウィンクしていたような気がします。

***

その週、カイは新しいスーツに身を包んで、祝福師の祝福を受けに行きました。テイラー兄弟が近くにいるのを感じました。彼が今も見守ってくださっていることを感謝しています。◆

  1. Missionary Training Center:宣教師訓練センターの略

  2. カイ兄弟が東京で宣教師として働いた経験に関する記事はこちら

  3. 宣教師の訓練集会

  4. 宣教師用の商品を取りそろえている店