2024
御霊を招く音楽を若人に届ける
2024年10月号


For the Strength of Youth

御霊を招く音楽を若人に届ける

2024年8月10日から11日にかけて,fsy東京セッション(東京都渋谷区代々木,国立オリンピック記念青少年総合センター)に,ユースミュージックを手がけるニック・デイ兄弟と,伴侶のダーラ・デイ姉妹が来場した。今年のテーマ曲,「Disciple of Christ─愛に包まれて─」を合唱曲にアレンジして参加者全員の300人以上で歌うという,特別な音楽プログラムが行われた。

教会本部の神権部でユース・ソングライティング・マネージャーを務めているニック兄弟は,これまでほとんどのユースミュージックの曲に携わってきた。2024年のアルバムでは,13曲中11曲(アレンジ版含む)がニック兄弟単独の作詞作曲か,他のアーティストとの共同制作である。そして今年の14曲目,テーマ曲〔合唱バージョン〕を携えて彼は東京へやって来た。

ニック・デイ兄弟

スターを目指すよりも楽しいこと

13年にわたりユースミュージックを制作してきたニック兄弟だが,日本には不思議と縁がある。父親が札幌伝道部で奉仕し,その後,米空軍で勤務したため,ニック兄弟は沖縄で生まれて6か月までそこで過ごした。5歳でピアノと作曲を始め,13歳から歌詞の伴う曲を書くようになる。ブリガム・ヤング大学(BYU)入学後は作詞作曲クラスを取り,自作の曲を人前で披露するまでになった。当時は「愛」といったテーマの,ラジオから流れてくるような曲を作っては,コンサート会場からプロボ(BYUのある街)じゅうのレストランまで,できる限りあらゆる場所で演奏した。「BTSのようなロックスターになりたいと思っていたんです」と笑うニック兄弟は,音楽で成功しようと熱心に励んでいたのだ。

2011年,縁あって教会の実務部門でインターンシップをすることになったニック兄弟は,新たに立ち上がったユースミュージックのプロジェクトに携わる。上司から「祈り」「友情」といった各テーマを伝えられ,それに沿った曲を仕上げていく。教会用の音楽を作るのは初めてのことだったが,やってみると楽しく,この仕事が大好きになった。─やがて自らの演奏活動はやめ,多くの時間を教会のための作詞作曲に費やすようになる。「音楽が人々の人生に及ぼす力,……救い主についての音楽が及ぼす力を目にできるんです。」2016年には教会職員として正式に採用され,主にユースミュージックを担当することになった。今やニック兄弟の携わった作品は(efy用の曲を含め)170曲以上に上る。

御霊とともに

音楽の才能に恵まれたニック兄弟だが,すべてが順風満帆に進行するわけではない。「一番難しいのは,フレッシュで新しく,ユニークな音楽を生むこと,何度も同じような曲を書かないことだと思います。」そう語るニック兄弟は,インスピレーションを受けようと様々なスタイルの音楽に耳を傾ける。良い曲が浮かぶまでに10個も15個もアイデアを書くことがあれば,テーマ曲を仕上げるのに数か月を要することも。「本や講演(の原稿)を書くのに似ていると思います。何かを書いては,捨てる。初めからやり直しては書き直し,完成品を作るために何をする必要があるかを見極めます。ですから,たくさんの努力,労力が求められます。」

「もし何かをほんとうに良いものに仕上げたいのなら,……長い時間がかかります。それでも御霊がともにあれば,それは間違いなく助けになります。」ニック兄弟はいつも,祈るような気持ちで作曲に取りかかり,場合によっては関連聖句や説教を準備する。「創作の過程にあって,天の御父にずっと携わっていただくことで,より早く,より良いものができるんです。」

ニック兄弟には,それを実感した経験がある。ある人と口論になり,自分が良い状態にないと悟ったときのことだ。自らの行動を振り返り,赦しを祈り求めたところ,曲が思い浮かんだ。「こんなに弱いぼくをどうか赦してほしいんだ 汚れたぼくを捨てて 生まれ変わる奇跡を……」

そうしてこの曲は「ものすごいスピード」で仕上がり,思い出深いものとなった。

ダーラ・デイ姉妹

「わたしにもまだ希望はあるのでしょうか」

8月11日の安息日,いよいよ全員で歌い収録する本番を迎える。ソプラノ,アルト,テナーの3パートに分かれて青少年たちが座る大ホールに,ニック兄弟とダーラ姉妹が登場した。全員での歌唱に先立ち,二人は短く証をする。ダーラ姉妹は自らの過去について青少年に語る。

ダーラ姉妹はかつて,サーカスでのパフォーマンスに自らの居場所を見いだし,かのシルク・ドゥ・ソレイユへ出演するまでに才能を開花させた。だが,霊的な生活は荒んでいた。祈っても聞き届けられないように思える現実に失望し,自分のやりたいように生きようと,神に背を向けて久しかった。「幸福を感じることはありませんでした。迷い,混乱を覚え,暗闇に陥ったのです。」そのような生活をやめ,「戻ろう」と決意するも,長年の悪習を断つのは難しく,変わることのできない自分に恐れが増すばかりだった。

そんなある日,高速道路を走っていると,祈った方が良いという気持ちを感じた。長いこと神に語りかけてはいなかったが,一縷(いちる)の望みを託すことにした。「天のお父様,そこにおられるのなら,気にかけてくださっているのなら……わたしにもまだ希望はあるのでしょうか。」

─すぐさま,思いと心にささやく声があった。「右側の窓を見なさい。」声に従うと,刑務所が目に入る。すると再び声が,「左側の窓を見なさい」と語りかけてきた。目をやると,そこにはユタ州ドレーパー神殿があった。最後に,声の持ち主ははっきりと告げた。「あなたには選ぶ自由があります。自由か,死か,そのどちらかを。」

「その瞬間,わたしは力を感じました。天のお父様は,わたしたちが自分で選ぶ能力を尊重しておられます。自由というのは,いつでもわたしたちが選び取ることのできるものなのです。人生でどれほど困難な状況に置かれようとも……キリストには常に平安があるのです。」ニック兄弟の染み渡るような伴奏とともに,ダーラ姉妹は「主の平安受け」を歌う。

そして全員が立ち上がり,ニック兄弟と共にテーマ曲を合唱する。─「完璧でした!」一発録りでニック兄弟のOKが出て,ホール全体から拍手が沸き起こった。

世界中の青少年へ 新たな選択肢を―

fsy用の曲というだけでなく,人々が「毎日聴ける」ような曲というのも,ユースミュージックの目指すところだ。生まれたときからネット環境が身近にある現代の青少年たち。彼らをそういった媒体から引き離すのではなく,彼らがSNSや音楽に夢中になっている場所においてこそ,ユースミュージックを作ろうとしている。「曲が良くなればなるほど,わたしたちが力を注げば注ぐほど,リサーチを重ねれば重ねるほど,長く続ければ続けるほど,より多くの若者に届き,より多くの人々を助けるものになると思います。……わたしたちの目標は,世界中の若者に手を差し伸べるということです。」

その一環として,世界中の各地域ではユースミュージックを独自の形に仕上げることが奨励されている。現地に暮らす若者たちのニーズに合わせ,単なる翻訳にとどまらない歌詞の自由なアレンジが認められているほか,オリジナル曲の制作も勧められているのである。

日本では,2017年アルバムから,若い世代のシンガーをオーディション形式で募ってスタジオ録音を始める。それ以降毎年,日本語版をリリースしてきた。

訳詞の文字数が限られる日本語でも,青少年の心に寄り添った等身大の歌詞が発表されている。2024年日本語版の制作にシンガーとして携わった中塚愛(なかつか・あい) 姉妹は,このように振り返る。

「初めて日本語の歌詞を読んだとき,『「いいね!」押してるだけ』や『眠れないまま画面を見つめる』など,今の青少年の日常を切り取っているような内容で,この曲はまさに現代の子たちに向けた曲なんだと感じました。日本語で歌えたことは本当に大きな祝福〔です〕。」

ニック兄弟は言う。「今や聴くことのできる(教会の)音楽が大量にあり,身近にある世俗的な音楽の代わりにユースミュージックを聴くことができます。……日曜日や平日に,御霊を感じる助けとして聴くという選択肢があるんです。」

自らを良いもので満たす

ますます真理から遠ざかる世にあって,ニック兄弟は「御霊を保つ方法」を見いだすようにと勧める。「ほんとうの意味で幸せを感じる唯一の方法は,福音に生き,救い主に従うことであり,良い考えやメッセージで自分の思いを満たすこともその取り組みの一環と言えます。皆さんが聴く音楽,観るビデオ,一人でいるときに行うこと,そういったものすべてが,皆さんがどのような人物になるか……を決定づけることになるのです。」御霊とともにあるなら,天の御父はわたしたちをいるべき場所へと導き,幸せを感じられるように助けてくださる,とニック兄弟は断言する。

今後はより多くのソングライターを巻き込み,様々なスタイルを生み出し,リスナーを増やしていきたいとの目標を掲げるニック兄弟。「人々が救い主の愛を感じ,願わくば日々少しずつ主に従いたくなるような,より良い音楽を生み出せるようになりたいと願っています。」

コラム:ユースミュージックのあゆみ

今日のfsyは,ユタ州プロボで1976年に開催されたefyに端を発する。172名の参加者,BYUの学生による15名のカウンセラーで始まったefyは,徐々に規模を拡大した。時代とともに,教会全体に及ぶ国際的なプログラムが望まれ,結果として生まれたのがfsyだ。2019年までの43年間で,延べ90万人以上の青少年が証を育む場となった。

日本においては2011年に初めて「efy」が紹介され,京都セッションと東京セッションが開催された。以来smyc,fsy,nycと名称を変えながら,(コロナ禍での中止を経ながらも)原則として2年ごとに開催されてきた。

音楽面での歴史をたどると1984年,efyでは初となる音楽アルバムがカセットテープで発表された。その後は毎年,各年度のefyのテーマに合わせた楽曲が作られるようになる。日本でも親しまれている「efyメドレー」が誕生したのは1999年のことだ。

efyのための音楽は長らく制作されてきたが,世界へ拡がる新たなfsyプログラムの開催に伴い,より国際的な音楽アルバムを目指して生まれたのが「ユースミュージック」である。2013年以降は毎年,ユースミュージックのアルバムが制作されてきた。今やテーマ曲が約40か国語に翻訳され,教会機関誌『リアホナ』に載るようになったほか,その他の曲を含むアルバムが各国語版で翻訳・制作されるまでに成長している。◆

  1. For the Strength of Youthの略。キリスト教の教えを土台とし,様々な活動を通して青少年がより良い人生を設計できるよう支援することを目的とする,宿泊を伴った教育プログラム

  2. 日本語視聴はこちら https://bit.ly/3WP67tA

  3. 教会が運営する米国最大級の私立大学

  4. 韓国の人気アイドルグループ

  5. 「Free My Soul─すすむ力を」日本語版歌詞より抜粋。視聴はこちらhttps://bit.ly/3WSKM27

  6. 世界的なサーカス・エンターテイメント集団。2023年度の日本公演では10万人以上を動員した

  7. 2018年度のユーステーマ曲 視聴はこちら https://bit.ly/3STyQMH

  8. この日収録した2024年度テーマ曲〔合唱バージョン〕の視聴はこちら https://bit.ly/3Z4hXCy

  9. この曲「Beloved―わたしは―」の視聴はこちら https://bit.ly/4fMSSlN

  10. 2024年度のフルアルバムは,教会公式ウェブサイト(上記リンク・QRコード),チャーチ・ミュージックアプリ,福音ライブラリー,YouTube チャンネル『末日聖徒イエス・キリスト教会』,Spotify,Apple Musicで入手可能
    ◉2024年フルアルバムのご視聴は https://bit.ly/49qfchC

  11. Especially For Youthの略。青少年に様々な学習の機会と健全な活動を提供することによって,彼らが福音に従って生きる決意を強めることを目的とする。当初はBYUで開発された青少年の宗教教育プログラムだった

  12. 『賛美歌』195番「シオンの娘」および『子供の歌集』92-93「ニーファイのように」を組み合わせた曲。プログラム内で歌われる主要な曲となった